ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーー決闘を映したスクリーン

ーーー飛び回るドローン


求められてるものはいつもと変わらない。

勝つ。

踊る。

歌う。

手を振る。

それだけを考える。

 

ーーーアンコール。

 

いつからか、観客はわたしを見なくなった。

勝つわたししか見なくなった。

わたしはわたしじゃなくなった。

このデッキも、もう、元のテーマでは呼ばれない。

呼んでくれる人はいない。

 

ーーーもう一度デッキを振りかざす。

 

それなら、それでいいのかも。

やるべきことだけが決まって、それ以外を見ないで済むから。

 

ーーー歓喜の声

ーーーまた繰り返される劇に震える観客

 

でも、ちょっとだけ、

頭の中をかすめていく。

わたしは…、

 

ーーー吹き上がるスモーク。

 

 

 

わたしは、何がしたかったんだっけ?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

試合当日。

f:id:hadukimiu:20191004232949p:plain「すごい、こんなにたくさん…。」

f:id:hadukimiu:20191004232920p:plain「こんなに人が集まるなんて、驚きですわね。」

 

会場になっている駅前にはすでにステージが設営されていた。

高さはおよそ4メートルくらいだろうか。

4メートルとはいえ周りがひらけていると、この高さでは恐怖感を感じるのはちがいない。

バックには巨大スクリーンが設置されて、テストも兼ねてか、周りの座席の様子が映っている。

すでに大勢の人々が席に座っており、席を取れなかった人は駅周辺の遊歩道からカメラを構えている。

 

スタッフ「ようこそ、TCGまいろぐカフェ御一行様、こちらへどうぞ。」

 

スタッフに案内されて控室に通される。

 

f:id:hadukimiu:20191004232920p:plain「まい、準備は大丈夫ですの?」

f:id:hadukimiu:20191004232957p:plain「あ、だめ、緊張してきた。人前無理。」

f:id:hadukimiu:20191004232953p:plain「あんなにパラパラ踊って練習してたのに!?」

 

いや、ほんとなんのために踊ってたのよ、ここでコミュ障発揮されても困るよ?

 

葉月「あ、おねぇちゃん達ちゃんと来たんだ!」

 

控室のドアを開けて、葉月ちゃんが入ってくる。

アイドルらしいちょっと濃いめの紫のフリフリな服、長さの違うニーソックスそこに黄色とピンクのラインが入っている。

可愛らしいけどどこかミステリアスといった感じか。

 

「葉月ちゃん。」

 

私の手を掴む彼女。

 

葉月「今日の対戦、楽しみにしてるよ!お客さんいっぱい楽しませようね!」

 

そういってまた部屋をパタパタと出て行く。

天真爛漫に見えるはずなのに、あの無表情が脳裏にちらついて、寒気を感じる。

…あの表情も、ぜんぶ作り物なんだろうか。

 

f:id:hadukimiu:20191004231051p:plain「すぅ、それにまい。ここまできたらもう、後戻りはできませんわ。細かいことは考えずに、目の前のことだけ考えましょう?」

シフォンが私たちに声をかける。

そうだ、今の私たちはお店を守ることだけを考えなくちゃいけない。

 

だから、勝たなきゃ。

 

試合五分前、ステージ下まで案内される。

司会の声が会場に響く。

 

MC「さあ、皆様お待たせしました!今夜我らがアイドル葉月美羽に挑むのは、街場のカフェ!『TCGまいろぐカフェ御一行!』」

 

いや、実際は乗り込んできたの貴方達よね…?

 

MC「葉月美羽はまた新たなアイドルの足跡を残せるのか?それとも街場の意地が炸裂するのか?

どちらも気力十分!観客興奮!彼女の家まで15分!それではお待ちかね!まずはチャレンジャーの登場だーーーー!!!」

 

どっかで聞いたセリフな気もするが、そんなことは言ってられない。

 

f:id:hadukimiu:20191004232920p:plain「行きますわよ!」

f:id:hadukimiu:20191004233007p:plain「うん。」

f:id:hadukimiu:20191004232946p:plain「行こう!」

 

3人でステージを駆け上がる。

登りきった先には、

光。

光。

光。

いつもと全く違う風景。

人。

人。

人。

埋め尽くすかのような人々。

これが、あの子がずっと見てきた風景なんだろうか。

 

MC「さあ、今夜の意気込みをぜひ聞かせてください!」

 

マイクを受け取るまい。

 

「……。」

 

やっぱり、緊張するよね、無理も、

 

f:id:hadukimiu:20191004233010p:plain「私の方が可愛いでしょーーー!!」

 

前言撤回。

吹き荒れる爆笑。

シフォンですら唖然。

何言ってるんだこのオーナーは。

ほら!MC困ってんじゃん!

 

MC「……これは、なかなか個性的なオーナーさんですね。」

 

本当にごめんなさい。

こういう人なんです。

 

MC「さあ!お次は皆様の大本命!彼女こそが至高!最高!最強のアイドルだ!葉月ィィィィィ、美羽ゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

耳がつんざくような名乗り。

ステージが暗転し、いくつもの色のスポットライトが駆け巡る。

 

そして彼女が、ステージを駆け上がる。

 

葉月「みんなー!おっまたせー!葉月美羽のLive☆Duel!はっじまるよー!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーー歓声が聞こえる。

ーーー眩いばかりのスポットライトが目まぐるしく動き回る。

 

赤、青、黄色。

紫、橙、緑色。

一層大きくなるBGM。

 

ーーーステージにはすでに人が上がっている。

 

誰も彼もが皆、待ち望んでいる。

これから、数千もの人々が届きもしない私に手を伸ばす。

声を張り上げる。

私を。

私じゃない私を求めて。

なら、応えなきゃ。

私じゃなくなった私で。

 

ーーーデッキを手に取る。

 

彼らが求めているものはそれだけ。

いつものように、歌って、踊って、手を振りかざして、声に応えよう。

 

ーーースポットライトが降り注ぐ。

ーーー肌が熱い。

ーーー割れるような歓声が轟く。

 

でもそれだけ、たったそれだけ。

 

ーーー幕は上がった。

 

さあ、

 

 

 

 

 

 


いつものように、蹂躙しよう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

葉月「みんなー!おっまたせー!葉月美羽のLive☆Duel!はっじまるよー!」

 

大歓声。

あのスマホで見たような映像が今、目の前にある。

あの熱狂が、

あの興奮が、

あの歓声が、

全て、目の前にあった。

 

こちらに向き直る葉月ちゃん。

彼女はにこやかに告げる。

 

葉月「さあ、始めましょう?おねぇちゃん。」

 

ステージの床から台が2つ上がってくる。

しかし、デュエルをするには距離が空きすぎでは?

 

f:id:hadukimiu:20191004232949p:plain「この台はなんですの?」

葉月「もちろんデュエルフィールドだよ。」

MC「説明しましょう!今回はホログラムによるモンスターCGを使用してデュエルを行います!

勿論、ホログラムなのでダメージを負うことはありませんが、ダメージの代わりに!」

 

ブシュウゥゥゥゥゥゥゥ!!!と吹き上がる風。

 

MC「このようにエアーが噴き出してくるのでご注意を。」

 

流石にデュエルでリアルダメージが実装されるようなことはなさそうだ。

そこは安心なのだろうか。

 

f:id:hadukimiu:20191004231051p:plain「まい、よろしく頼みますわ。」

f:id:hadukimiu:20191004232954p:plain「うん、任せて。」

 

まいの手をキュッと祈るように握るシフォン。

 

f:id:hadukimiu:20191004232946p:plain「ぜったい、守り通してよ?」

f:id:hadukimiu:20191004232954p:plain「大丈夫。ね?」

 

まいは私の肩に手を回して抱き寄せてくれた。

 

「尊い」

「良きかな…」

「あ〜、心がキュンキュンするんじゃ〜」

 

毎回この人たちどこから声が上がってるんだろう。

 

MC「それでは、互いのデッキをカットアンドシャッフルしてください。」

 

まいが葉月ちゃんに、葉月ちゃんがまいにデッキを渡し、カットし合う。

 

そして互いにフィールドにデッキとエクストラデッキをセットする。

 

MC「コイントスを行います!」

 

MCがコイントスを行う。

表が出れば葉月ちゃん、裏が出れば私たちが先攻後攻を決められる。

 

MC「表です!」

 

スクリーン上のMCの手の上には、星の面が刻印されたコインが映っている。

 

湧き上がる観衆。

まいろぐカフェの存続をかけた戦いが、始まった。

 

 

葉月「容赦なんてしないよ!私のターン!」

 

勢いよく手札からカードを繰り出す葉月ちゃん。それに合わせるかのように観客が沸き立つ。

 

葉月「手札から、

トリックスター•ライトステージを発動!

発動時の効果処理でトリックスター・キャロベインを手札に!

モンスターがいない時、このカードは自身の効果で特殊召喚できる!

キャロベインを特殊召喚!」

 

ホログラムがトリックスター・ライトステージの背景を映し出す。

風船やライトが駆け巡る、とても綺麗だ。

そして今、サーチ効果を持つキャンディナではなく、キャロベインを加えた。つまり…、

 

葉月「通常召喚!トリックスター・キャンディナ!

そのまま召喚時効果を使うわ!

デッキからトリックスター・リンカーネイションを手札に加える!」

 

f:id:hadukimiu:20191004232949p:plain「やっぱりキャンディナを持ってる!ハンデスカード…こっちの手札を根こそぎ奪うつもり!?」

葉月「何言ってるのお姉ちゃん?そんな面白くないことしないわ!」

 

堂々と言い切る葉月ちゃん。

 

f:id:hadukimiu:20191004232925p:plain「それもそのはずですわね…生半可なハンデスなんて不要、彼女のデッキは…」

葉月「キャンディナとキャロベインでリンク召喚!

さあ!煌びやかなアイドルの時間はおしまい!ここからは…堕天使の時間よ!

来なさい!失落の堕天使!!」

 

ステージが暗転し、ホログラムに映し出される黒い羽と失落の堕天使の姿。

毎回こんなスケールでデュエルをしてるなんて…!

 

葉月「失落の堕天使の効果!手札からリンカーネイションを捨てて発動するわ!」

f:id:hadukimiu:20191004232953p:plain「嘘!?制限になってるハンデスカードをコストにした!?」

葉月「デッキから、堕天使イシュタムを手札に加える!」

 

堕天使、漫画版遊戯王GXの頃から存在するテーマ。しかし、現在は新たなカードが追加されている。それが堕天使としてカテゴリ化されたカードたち、その中で堕天使イシュタムの効果は…!

 

葉月「手札から堕天使の追放を発動!堕天使スペルビアを手札に!そしてスペルビアとイシュタムを墓地に送ってイシュタムの効果発動!

デッキからカードを二枚ドローする!」

 

強力な手札交換、しかしその真価はドローすることではない。

ニッ、と笑みを浮かべる葉月ちゃん。

 

f:id:hadukimiu:20191004231051p:plain「まい!気をつけなさい!葉月ちゃんの鉄板ムーブですわ!」

葉月「今更遅いよ!堕天使の戒壇を発動!墓地から堕天使スペルビアを蘇生!蘇生されたスペルビアの効果で、イシュタムをさらに蘇生!」

 

一枚の墓地から特殊召喚する蘇生カードで二体のモンスターが並ぶ。

そう、これがアイドル葉月美羽が得意とする動き。

スペルビアによる墓地経由の大量展開。

 

葉月「まだまだ!リンカーネーションを除外して効果発動!キャンディナを蘇生よ!」

 

再び現れるキャンディナ。

 

葉月「キャンディナとスペルビアでリンク召喚!

テクノポップはお好みかしら?

I:P マスカレーナ!」

 

スポットライトが駆け巡り、可愛らしい、サイバーパンク風の少女モンスターが現れる。効果は相手ターン中のリンク召喚。

そしてマスカレーナを素材にリンク召喚されたモンスターは、効果破壊耐性を付与される。

 

f:id:hadukimiu:20191004233007p:plain「完全に洗練されたムーブね…」

葉月「もちろん。そのために何度もうごかしたデッキよ?回した数なら負ける気はしないもの。

イシュタムの効果!LPを1000払って発動!

対象は堕天使の追放!その効果をコピー!

追放の効果は堕天使カードのサーチ!

魅惑の堕天使を手札に加えるわ!

コピー元の追放はデッキに戻るよ!

カードを二枚セットしてエンドフェイズに移行!失落の堕天使の効果でフィールドの天使族モンスターの数だけLPを500回復!

フィールドには天使族が二体!よって1000回復してまたLPは8000よ!これでターンエンド!」

 

まいが、ごくりと息をのむ。

 

伏せたのは魅惑の堕天使ともう一枚。

そして相手のターン中にはマスカレーナで耐性を付与されたモンスターが立つ。

 

この強固な盤面を突破できる人は少なく、

多くの相手を打ち倒してきた。

 

元のテーマの名はトリックスター堕天使。

けど、その強さと打ち立てた記録から、その名で呼ぶ人はもういない。

 

だから、人々は彼女のデッキをこう呼ぶ。

 

葉月「おいで、おねぇちゃん。素敵なライブで遊んであげる…!」

f:id:hadukimiu:20191004233007p:plain「………っ!」

 

 

 

『堕天リンクーエンジェルリンク』と……!

 

(先攻1ターン目終了時盤面)

f:id:hadukimiu:20191028014958p:plain


 f:id:hadukimiu:20191004233007p:plain「私のターン…ドロー!

まずはこの子からね!手札から、ドラゴンメイド・エルデを捨てて効果発動!手札からドラゴンメイド・ラドリーを特殊召喚するわ!」

観客「ドラゴンメイド!面白いテーマだな」

観客「けど勝てるのか?ラドリーって効果確か…」

f:id:hadukimiu:20191004233007p:plain「ドラゴンメイド・ラドリーの効果よ!デッキトップから三枚、墓地に送るわ!」

葉月「ランダムな墓地肥やし?いきなり賭けに出たの?おねぇちゃん。」

 

ラドリーがずっこけて洗濯物を落とすエフェクトが入る。

え、こんなかわいいの!?

 

f:id:hadukimiu:20191004233010p:plain「デッキトップから墓地に送るのは…

死者蘇生、

おろかな埋葬、

亡龍の戦慄ーデストルドー!」

f:id:hadukimiu:20191004232955p:plain「トルドー以外落ち悪すぎない!?」

f:id:hadukimiu:20191004232925p:plain「手札2枚使っての墓地肥やしがこの結果はちょっも不味いですわ。」

葉月「どうやら幸運の女神様はあんまり笑ってくれなかったようね。」

f:id:hadukimiu:20191004233010p:plain「…っ!手札からライフポイントを半分払って亡龍の戦慄-デストルドーの効果!対象はドラゴンメイド・ラドリーにして、自身を特殊召喚!この効果で特殊召喚した場合、デストルドーのレベルはラドリーのレベル分下がって、レベル5になるわ!そのままラドリーとデストルドーで…」

葉月「させないよ?」

f:id:hadukimiu:20191004232957p:plain「えっ…?」

葉月「手札から堕天使アムドゥシアスを墓地へ送ってトラップカード、魅惑の堕天使を発動!

みんなは効果を知ってるよね!」

観衆に呼びかける葉月ちゃん。

葉月「効果処理時に相手のモンスターを選んでーー…っ」

「「「「「奪う!!!」」」」」

一斉に合わせる観客たち。

 

 

f:id:hadukimiu:20191004233007p:plain「対象を取らないコントロール奪取!?」

葉月「当たり前でしょ、おねぇちゃん!アイドルは下手に対象なんて取らないわ!」

 

なすすべなく奪われるデストルドー。

召喚権がまだあるとはいえ残りの手札は三枚。チューナーを奪うこのやり方、徹底的にハリファイバーを警戒してる…。

このままじゃ展開できずに負けてしまう。

 


葉月「それだけじゃないわ!LPを1000払ってイシュタムの効果!堕天使の戒壇をコピー!

先程墓地に送ったアムドゥシアスも蘇生するわ!」

f:id:hadukimiu:20191004232953p:plain「何ですって!?」

一気に増える葉月ちゃんの盤面。

 

 

f:id:hadukimiu:20191004233007p:plain「手札から調律を発動!」

葉月「調律?えっと…たしか5D'sのカードだっけ?」

f:id:hadukimiu:20191004233007p:plain「そうよ!この効果で私は手札にジャンク・シンクロンを加えるわ!その後、デッキトップから一枚カードを墓地へ送る!墓地へ送られたのは…ドラゴンメイド・フルス!」

f:id:hadukimiu:20191004232955p:plain「ラドリーの進化した姿が墓地にいった…」

f:id:hadukimiu:20191004232920p:plain「悪くない落ちではありますけど、まだ足りませんわ…マスカレーナの効果で恐らく出てくるカードが問題よ。」

 

そう、シフォンの懸念してる通り、マスカレーナで出てくるモンスターが1番の大敵。

 


双穹の騎士アストラム。

対象に取ることができず、特殊召喚されたモンスターと戦闘する場合にはそのモンスターの攻撃力分攻撃力を上昇する。

マスカレーナを素材に召喚されているため、効果での破壊も通らない。

そして、仮にこちらが何らかの効果で墓地に送っても、こちらの場のカード一枚をデッキに戻せてしまう。

 


そして、イシュタムが堕天使の戒壇をコピーして出したアムドゥシアスもイシュタムと同じ誘発効果を持っている。

つまり、もう一回は確実にこちらのモンスターを奪える。

 


この盤面を突破しなければ、間違いなく返しのターンでやられてしまう。

 


全体除去になるカードを打とうにも、発動にチェーンされてしまえば無意味になるだろう。

 

 

f:id:hadukimiu:20191005000117p:plain「そういえば、お店の時の会話、覚えてる……!」

葉月「なんのことだっけ?」

f:id:hadukimiu:20191005000117p:plain「アイドルは必要だからしてるって言っていたよね。」

葉月「……そうだよ?」

f:id:hadukimiu:20191004233007p:plain「自分がこんなことしたいとか、そういうことはなかったの?」

葉月「…特にないよ?

みんなからやってって言われて、始めたから。

 

私のデュエルに興奮する人がいて、

私の歌に元気付けられる人がいて、

私の踊りで笑顔になる人がいた。

 

それだけだよ。

 

みんなが求めてるから今も続けてる。

続けることが私の役目。

だから、それ以外のことなんて何にもいらないよね?

カードも同じ、いらないカードは抜いて必要なカードを入れる。

もしかしたらいつかは私もそうなるだろうけど、それは私がいらなくなった時。

だからその時は私もいなくなるだろうけど、それはそれでいいじゃない?」

 


無言になってしまった、まい。

ライブステージの上だから葉月ちゃんもいつもの可愛らしい表情は変わらないけどきっと、本当はあの無表情のままなんだろう。

 

 

 

f:id:hadukimiu:20191004233012p:plain「……そうかもね、自分がするべきことが決まって、それを自分で望んでいるなら、それでいいのかも。」

 


言葉を切るまい。

 

 

f:id:hadukimiu:20191004233007p:plain「でもね……、

大衆が望むから切り捨てていいものがあるわけじゃない!

大衆が望むから犠牲になっていいものがあるなんて絶対間違ってる!

あのカフェにも、大勢じゃなくてもひとときの楽しみを求めてる人が確かにいるの!

貴女だってそう!自分でやりたいことがないから誰かの言いなりのままこの先もライブを続ける気!?

そんなの絶対に違うわ!

やるべきことだけで生きようとしないで!

 
貴女のやってることはアイドルなんかじゃない、ただの大勢の人の享楽の生贄よ!」

 


そう啖呵を切って見せた。

 

 

f:id:hadukimiu:20191004231051p:plain「まい…。そうですわ!私たちもあのお店をで働くときに誓いましたわ!来てくれる人たちに、癒しを与えるって!」

 


葉月「でも、ここで負けたらそれも叶わないね。

そして、このライブで私が勝つ、それも変わらない。」

 

f:id:hadukimiu:20191004232954p:plain「そんなことは決まってない!いくよ!手札から守護竜ユスティアを捨てて…

 一撃必殺!居合いドロー!を発動!!!」

葉月「なんですって!?」

 


一撃必殺!居合いドロー!

それは特定の条件下で特大のバーンダメージを与えるカード。

 
葉月「こ、こんなところでワンキルを狙いに来るつもり!!?でも、お姉ちゃんのデッキはまだ29枚!そんな状態で引き当てられるわけないわ!」

f:id:hadukimiu:20191004233007p:plain 「ええ、普通に考えてもそんな大逆転劇、狙えるわけないわ。けど、貴女も知ってるはず、その前に行われる処理を!!」

「狙いは墓地肥やし?!」

f:id:hadukimiu:20191004233007p:plain「貴女の場には今、

トリックスター・ライトステージ、

失落の堕天使、

I:Pマスカレーナ、

堕天使イシュタム、

堕天使アムドゥシアス、

私から奪った、亡龍の戦慄ーデストルドー

伏せカード、

全部で7枚のカードがある!

つまり処理に入れば7枚のカードを墓地に送るわ!」

「ーーーっ!!なら!マスカレーナの効果発動!私は、フィールドの失落の堕天使とマスカレーナでリンク!来て!

双穹の騎士アストラム!」

 

ついに青の騎士がフィールドに降り立つ。

マスカレーナの効果で破壊されず、対象にすら取れない最強の騎士が。

 

f:id:hadukimiu:20191004233007p:plain「それでも落とすカードは6枚!いくわよ!

 1枚目ーーー、竜の霊廟!

2枚目ーーー、一撃必殺!居合いドロー!

3枚目ーーー、一撃必殺!居合いドロー!」

f:id:hadukimiu:20191004232925p:plain「そんな!居合いドローも全部落ちてワンキルも狙えないしこの落ちは悪すぎますわ!」

f:id:hadukimiu:20191004232953p:plain「まい!!」

f:id:hadukimiu:20191004232954p:plain「大丈夫、私、信じてるから。

 4枚目ーーー、ドラゴンメイド・ナサリー!

5枚目ーーー、ドッペル・ウォリアー!

6枚目ーーー、ボルト・ヘッジボッグ!!!」

葉月「嘘でしょ!?」

f:id:hadukimiu:20191004233007p:plain「教えてあげる、あなたがいらないなんて言ったカード達の価値も、私たちの居場所の大切さも!

ドロー!私が引いたのは…ドッペル・ウォリアー!そして、その後墓地から6枚カードをデッキに戻す!

死者蘇生!

おろかな埋葬!

一撃必殺居合いドロー!を2枚!

調律!

竜の霊廟!」

 葉月「2枚目のドッペル・ウォリアー…。」

f:id:hadukimiu:20191004233007p:plain「通常召喚!ジャンク・シンクロン!効果で墓地のレベル2以下のモンスターを蘇生するわ!」

葉月「ドッペルウォリアーを蘇生するつもり?」

f:id:hadukimiu:20191004232954p:plain「いいえ、私が蘇生するのは、ドラゴンメイド・ナサリー!」

葉月「なんで…、まさかっ!?」

f:id:hadukimiu:20191004232954p:plain「その通りよ!あなたがここでジャンク・シンクロンを奪っても、ラドリーとナサリーでリンクすれば、ドラグニティナイト・ロムルスから竜の渓谷をサーチして、星杯の守護竜を墓地に送れる!

そうすれば墓地からユスティアをロムルスのリンク先に特殊召喚できる!

さあ!アムドゥシアスの効果を使うか決めなさい!!」

この時、私は多分初めて葉月ちゃんの焦った顔を見たと思う。

葉月「…いいわ!見逃してあげる!」

f:id:hadukimiu:20191004233007p:plain「なら、続けてさっき引いたドッペル・ウォリアーの効果!墓地からモンスターが蘇生されたことで自身を手札から特殊召喚するわ!」

 
盤面にはすでに、ラドリー、ナサリー、ジャンク・シンクロン、ドッペルウォリアーの四体。

これならモンスターを奪ってもリンクしたりシンクロすることができる。

   
ちょっとだけ、話をずらすね。

アイドル葉月美羽はプレイングも上手く、多くの相手を倒している。

 
だけど、彼女は11才のまだ小学生。

それに対して遊戯王は始まって以来、20年になる。

 
ライブで相手をしてきたデッキも展開デッキが相手なら、基本的にはリンク召喚を行うことを念頭にしてしまう。

 

つまり、それが何を意味するかというとーーー、

 

f:id:hadukimiu:20191004233010p:plain「自分フィールドのラドリー、ナサリー、ドッペル・ウォリアーにジャンクシンクロンをチューニング!!!」

 


葉月「四体で…シンクロ召喚!?」

 


リンク召喚が主体の現環境にいる彼女は、リンク召喚を基本ベースに物を考える。

 

だから、低レベルのモンスターをどれだけ並べても、最初に『高レベルのシンクロモンスターを召喚する』ことを想定しない…

ううん、できない!

その知識も現在の主流カードに絞られる!

 
だからこそ、9年前に登場した召喚時に効果を発動するこのカードを予測できない。

止められないーーー!!!

 

 

 

f:id:hadukimiu:20191004232954p:plain「レベル9!氷結界の龍  トリシューラ!!!」

 (後攻1ターン目途中経過)

f:id:hadukimiu:20191028015448p:plain

 

 アイドルパニック③に続く