f:id:hadukimiu:20191004233007p:plain「さあ、このターンがクライマックスよ!ドロ―!」

勢いよくカードをドローするまい。

事実、このターンで決着を付けなければ、敗北は確定してしまうだろう。



f:id:hadukimiu:20191004233007p:plain「手札から、貪欲な壺を発動!!」

葉月「そのカードは!」

f:id:hadukimiu:20191004233012p:plain「墓地からハリファイバー、イヴ、トリシューラ、ヴァレルロード、ドッペル・ウォリアーの5枚を戻して2枚ドローする!」

f:id:hadukimiu:20191004232949p:plain「確か貪欲な壺ってエクストラデッキのみにカードを戻した場合はそのまま2枚ドローなんだっけ。今回はドッペルが戻ってるからシャッフルしてるけど。」

f:id:hadukimiu:20191004231051p:plain「ええ、よくシャッフルしてしまう人がいますけど是非覚えておきたいですわね。」

f:id:hadukimiu:20191004232954p:plain「手札からドラゴンメイドのお心尽くしを発動!ナサリ―を特殊召喚!ナサリ―の効果発動!墓地のラドリーを特殊召喚する!ラドリーの効果!行くわよ!」

再び現れるラドリー、そしてまたずっこける。

今度はラドリーをナサリ―が撫でてる。

可愛い…技術スタッフさん本気出し過ぎでは…?

 

f:id:hadukimiu:20191004233007p:plain「今回墓地に落ちるのは、

デストルドー!ヘッジボッグ!シンクロキャンセル!」

葉月「結構いいカードが落ちたわね・・・。」

f:id:hadukimiu:20191004232954p:plain「もう一度デストルドーの効果!LPを半分にして、今回は守備表示で特殊召喚!」

葉月「……!トリシューラが目に見えている以上、使わないわけにはいかない!スペルビアを墓地に送って魅惑の堕天使を発動!皆行くよ!相手のデストルドーを…、」

「「「「「奪う!!!」」」」」

またもや奪われたデストルドー。

まいの残りハンドは1枚。お願い・・・勝って!

f:id:hadukimiu:20191004233007p:plain「そう、トリシューラが目に見えている以上、貴女はそれに対応するしかない。だからこのカードが使える!ジャンク・シンクロンを通常召喚!」

おおお!と沸き立つ観衆。

葉月「こ、この盤面…!」

f:id:hadukimiu:20191004233007p:plain「どこかで見たような盤面だけど、もう私にはシンクロキャンセルは残ってない。だからトリシューラを立てることもできないでしょう。だからジャンク・シンクロンの効果で蘇生するのは、ジェット・シンクロン!」

葉月「しまった!?」

f:id:hadukimiu:20191004233007p:plain「これならジェット・シンクロンにラドリー、ナサリ―でも、ジャンク・シンクロンにナサリ―でもイヴにアクセスできる!

続けていくわよ!ジャンク・シンクロンとナサリ―でシンクロ!イヴをシンクロ召喚!イヴの効果で星遺物の守護竜をサーチ!星遺物の守護竜を発動!墓地からナサリ―を蘇生!」

葉月「またトリシューラへのルート!やらせない!テスカトリポカの効果!今度はイヴをーーー!」

「「「「「奪う!!!」」」」」

 

そう、3回に及ぶトリシューラの強襲、それを受けてしまえば、

嫌でもレベル9シンクロへのルートを意識させられてしまう。

だからこそ、まいは2回のコントロール奪取を使わせる動きを優先させた!

 

f:id:hadukimiu:20191004233007p:plain「チューナーがいるから墓地のヘッジボッグを1体蘇生とジェットシンクロンでリンク!ハリファイバー!ハリファイバー効果でデッキから三枚目のジャンク・シンクロンをリクルート!」

 

フィールドにはハリファイバー、ナサリー、ラドリー、ジャンク・シンクロン。

 

f:id:hadukimiu:20191004233007p:plain「墓地のジェット・シンクロン効果!エルデを墓地に送って自己再生!そして!ジェット、ジャンク、ハリファイバーでリンク召喚!!ヴァレルソード・ドラゴン!」

葉月「ヴァレルソードがここで…!」

f:id:hadukimiu:20191004233010p:plain「バトルフェイズ!ラドリーとナサリ―は真の姿のフルスとエルデになる!ヴァレルソードでテスカトリポカを攻撃!

攻撃宣言時にヴァレルソード効果!テスカの攻撃力は半分の1400になって、ヴァレルソードは4400に!」

葉月「きゃあああああああああ!!!」

 

3000のダメージで残りLPは1500。

強烈な風が吹き出し、葉月ちゃんは後ずさる。

 

f:id:hadukimiu:20191004233010p:plain「エルデでイヴを攻撃!ヴァレルソードの効果!エルデを守備表示にしてデストルドーを攻撃!」

 

続けて破壊されるイヴ、デストルドー。

 

葉月「あ……。」

f:id:hadukimiu:20191004232954p:plain「これで最後よ!ドラゴンメイド・フルスでダイレクトアタック!

これが私のデッキ…『がんばラドリー』よ!!!」

 

フルスの吐き出す濁流のブレスが葉月ちゃんに直撃した。

IMG_0485


 

LPが尽きた葉月ちゃんには先ほどよりもはるかに強い暴風のようなエアーとスモークが吹き付ける。

 

いや、強すぎた。

 

彼女の体はあまりにも小さく、軽い。

 

なにより後ろに後ずさりすぎた。

 

彼女の体はステージの外に投げ出される。

 

f:id:hadukimiu:20191004233010p:plain「だめ!この高さでも頭から落ちたら…!」

 

スローモーションのように落ちていく葉月ちゃん。

 

私はその瞬間―――、

 

 

 

 

駆け出していた。

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

―――歓声が聞こえる。

ーーー眩いばかりのスポットライトが目まぐるしく動き回る。

 

私は負けた。

 

―――歓声が悲鳴に替わる。

 

自分の意志で決闘をする。

そうした結果がこの敗北。

 

―――スクリーンに映る私の姿。

 

でも、悪い気はしないかも。

全力で戦った今なら、この結果も受け入れられそう。

自分の意志でカードを引いて頑張ったから。

 

ーーースポットライトが降り注ぐ。

ーーー肌が熱い。

ーーー割れるような悲鳴が響く。

 

でも、したいことがあったとしたら、

 

もっと踊りたかった。

もっと歌いたかった。

もっと遊びたかった。

もっと、もっと。

 

―――重力に従って、終わりに向かって加速する。

 

もっと、自分で自由に、お友達と…デュエルしたかったなぁ。

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

f:id:hadukimiu:20191004232953p:plain「目を開けて葉月ちゃん!!」

葉月「……!!?」

 

本当にすんでの差。あとちょっと遅かったら地面に墜落してた!!

私はステージの際にうつぶせになって葉月ちゃんの手首をつかんでいる状況だ。

 

葉月「おねぇちゃん…?なんで?」

f:id:hadukimiu:20191004232943p:plain「当たり前でしょ!葉月ちゃんに死んでほしくなんてないもん!大事な友達でしょ!」

葉月「あ…。」

 

そうだ、まいログカフェに来て、ほんの少しの時間でも触れ合って、こうしてデュエルまでした。そこまでしたなら、友達と呼んであげなくてどうする!

 

f:id:hadukimiu:20191004232943p:plain「くぅぅぅぅ!」

 

無理やり引っ張り上げる。激痛が走る。でも、腕とかどうなってもいい!絶対に助けるんだ!

 

f:id:hadukimiu:20191004232920p:plain「すぅ!今助けますわ!」

f:id:hadukimiu:20191004233010p:plain「待ってて!今行くから!」

 

シフォンとまいが加わって、葉月ちゃんを無理やり引き上げる。

 

葉月「わ、私…。」

 

気が付けば私は葉月ちゃんを抱きよせていた。

 

f:id:hadukimiu:20191004232949p:plain「何にも言わなくていい。辛かったよね…大変だったよね。でももういいの。もう無理して誰かのために動かなくていいんだよ。」

葉月「……。」

f:id:hadukimiu:20191004232946p:plain「これからはいっぱい喧嘩すればいい、泣いたら慰めてあげる、悪いことしたら叱る、面白いものも、綺麗なものもいっぱい見よう?だから……。」

 

まいのほうを見やる。

まいは静かに頷いた。

 

f:id:hadukimiu:20191004232946p:plain「これからも、まいログカフェに来て?それがまいのお願いよ。」

葉月「う…うぁ…うわあああああああん!」

 

ステージに少女の泣き声が響く。

アイドルデュエリスト、葉月美羽。

1年間以上誰かのためにデュエルをし続けた彼女は、この日、やっと、自分の我儘でデュエルをすることができたのだった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

f:id:hadukimiu:20191004232953p:plain「えっ、休業!?」

f:id:hadukimiu:20191004232920p:plain「ええ、3rdシングルを出してから、中学に上がるまでの1年間ほど休業するとのことですわ。」

 

TCGまいログカフェ。またいつも通り、雑談にふける人や決闘に興じる人たちがいて、おかしな話題で盛り上がる人たちがいつものようにいる。

 

f:id:hadukimiu:20191004232954p:plain「ま、私のお陰でまた平常運転で来てるし、やっぱこのくらいがいいね~。」

f:id:hadukimiu:20191004232949p:plain「平常運転であるからってモン〇ンをやっていていい理由にはなりません。」

f:id:hadukimiu:20191004232957p:plain「なんか突っ込みがよりシビアになってる。」

f:id:hadukimiu:20191004232920p:plain「まぁ妥当ですわね。」

f:id:hadukimiu:20191004232949p:plain「ところで…なんだけど。」

 葉月「カオスソルジャー、ヴァレルソード、ルシフェルで攻撃!おしまい!」

客「ありがとうございます!!ありがとうございます!」

f:id:hadukimiu:20191004232953p:plain「休業したアイドルがなんでここでデュエルに耽ってるのよ!」

葉月「あ、おねぇちゃーん!狩ったよー!」

f:id:hadukimiu:20191004232953p:plain「明らかに勝ったの文字が違うよね!?」

 

どう見てもハンティングの方じゃん!XYZ次元に乗り込むアカデミアじゃん!笑いながら狩ってるじゃん!

 

f:id:hadukimiu:20191004232920p:plain「まぁ、ここで彼女が少しの間でも年相応にふるまえるなら、それはそれでいいですわね。そういえばすぅ、実はあの子、ここに来たのはあの日が初めてじゃないのですわ。」

f:id:hadukimiu:20191004232949p:plain「えっ?」

f:id:hadukimiu:20191004232920p:plain「アイドルになるちょっと前に、両親に連れられてここにあった構築済み堕天使デッキを買っていたんですのよ?しかも、貴女が

応対していましたわ。値段2000円で。」

f:id:hadukimiu:20191004232953p:plain「そうだったの!?どうしよう、全然記憶ない!」

 

今明かされる衝撃の真実、全く記憶なかったよ!?

近寄ってくる葉月ちゃん。

 

葉月「おねぇちゃん?」

f:id:hadukimiu:20191004232955p:plain「あ、うん、どうしたの?」

葉月「そういえば、お礼してなかったなーって。」

f:id:hadukimiu:20191004232949p:plain「お礼?」

葉月「うん、ステージで助けてくれたこと。この場所でもう少しいろんなことを勉強したいなって気づかせてくれたこと。このお店から私のお話が始まってたこと。だから…ね?」

 

急に椅子に膝をついて顔を寄せる。

頬に柔らかい感覚。

 

葉月「ありがと、おねぇちゃん!」

f:id:hadukimiu:20191004232943p:plain「…は、葉月ちゃん?!」

 

タタタッとテーブルに戻る小学生。

 

f:id:hadukimiu:20191004232943p:plain「い、いやあのね、今のって感謝の印だしフレンチてやつでしょ?だから…。」

f:id:hadukimiu:20191004232922p:plain「……ついに小学生を篭絡していたんですね?これ以上は聞きません、今生の別れは済ませてますよね?(๑╹◡╹)

f:id:hadukimiu:20191004232953p:plain「だ、だから、ちがうんですぅーーーーー!!!」

 

店内に私の絶叫がこだまする。

 

f:id:hadukimiu:20191004232957p:plain「殺傷沙汰にならない程度にねー?」

 

まいはPCでネットサーフィンしてる。 

TCGまいログカフェ今日も元気に営業中です。

 

 えっ?3rdシングルのタイトル?

それはねーーー。

 

 

 

 

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第二話:アイドルパニック 終